3月9日、3月定例議会で、県産業廃棄物最終処分場建設に関する質問を行いました。質問と答弁の全文をご紹介します。
日本共産党の千葉達夫です。発言通告に従い質問します。御答弁をよろしくお願いします。
新産業廃棄物最終処分場整備に向けた課題への対応策と本市の対応について
5月26日、大井川知事が日立市太平田鉱山跡地を新産業廃棄物最終処分場の候補地としたと発表して以降、市民からは様々な問題点や不安、意見が出されました。県は11月に「住民説明会でいただいたご意見等への回答」を発表し、2月15日には、県から急遽の要請を受けて開催された新産業廃棄物最終処分場整備調査特別委員会で「課題への対応策」が示されました。処分場の搬入ルートについて、道路を新設する計画が示されましたが、東京新聞では「具体的な費用やルートを詰めるのはこれからで、依然として候補地周辺の水質汚染のおそれもあり、課題は残されたままだ」と報道されました。
県は、地下水の調査だけでなく、大気や河川の水質、騒音・振動、生態系、放射線量の現況調査も進めていますが、2月15日の段階では「調査中」の記載が2箇所あり、「周辺環境現況調査」が完了するのは今年の7月~9月となっています。したがって今回は、あくまで中間報告であり、最終的な調査結果や具体的な対応策は今後となります。
示された対応策で十分なのか、不十分なのか、納得できるものか出来ないか、そのような議論がフォローアップ説明会を踏まえて市民、住民の中で始まっております。
そこで、
(1)茨城県から示された「課題への対応策」の検証について
県から示された「課題への対応策」が具体化されていくにつれて、対策の検証が必要と考えます。例えば、対策が十分なのか不十分なのかなど検証を行っていくことになると考えますが、今後、どのように市執行部では検証を行っていくのかお伺いします。
(答弁)
千葉議員の御質問にお答えいたします。
新産業廃棄物最終処分場整備に向けた課題への対応策につきましては、この間、県が実施してきた住民説明会やエコフロンティアかさま見学会において、住民の皆様からいただいた御意見を踏まえた課題への対応方針としてまとめられたものと伺っております。
本市の対応でございますが、3月6日から県によるフォローアップ説明会が開催されておりますことから、引き続き住民の皆様の声に広く耳を傾けますとともに、庁内の関係部課所が連携しながら、搬入ルートをはじめ、周辺環境への対策や地域振興策など、環境都市宣言をしている本市にふさわしい施設となり得るのかどうかも含めて、県の対応策の有効性について検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
(千葉)
「県の対応策の有効性について検討してまいりたい」とご答弁がありました。すなわち、「今後検討したい」とのことですが、検討に入るうえで、県から示された対応策の詳細な情報が必要と判断した場合は、県から情報を出してもらうといった働きかけが必要と考えます。例えば、新しい道路が「課題への対応策」の資料にある地図では連続した「赤丸」で示されていますが、具体的にどの位置なのか、山や土、森の木々はどの程度削るのかなどです。そして検証の結論だけでなく、検証のプロセスも適宜、市民に示して頂くことを要望しまして、次の質問に移ります。
(2)県主催のフォローアップ説明会について
「課題への対応策」の説明を中心としたフォローアップ説明会が3月6日、7日に県主催で開催され、3月13日には市内全体を対象に開く予定です。
県は、「課題への対応策」で「周辺住民との信頼関係を構築すること」を挙げており、信頼関係構築のための努力は行うようですが、フォローアップ説明会の回数は十分なのか、足りないのかも見極める必要があります。
そこで、今月行われているフォローアップ説明会について、開催をどうとらえ今後どのように評価していくのかを伺います。
(答弁)
お答えいたします。
御質問のフォローアップ説明会につきましては、住民説明会などで出された不安や要望を踏まえた課題への対応策について、県から住民へ説明する機会であると捉えております。
説明会の開催により、住民の皆様にとりましても、県の対応策についての理解が深まるものと考えております。
フォローアップ説明会は既に開始されておりますことから、市といたしましても、引き続き、その動向を注視し、住民の皆様の声に広く耳を傾けてまいりたいと考えております。
今後の評価につきましては、予定されている全ての説明会の状況を見極め、検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
(千葉)
「県の対応策についての理解が深まるものと考えている」とのご答弁がありました。説明会では「課題への対応策」の説明と質疑応答が行われるため、市民に対応策の内容が知らされ質問や意見が出されることになります。
そして、3月7日付の東京新聞は、3月6日に諏訪小学校で行われた住民説明会を「住民から厳しい意見相次ぐ」の見出しで報道しました。住民からは「候補地選定の再検討はしないのか」などと受け入れに難色を示す厳しい意見も相次いだ、と報じています。
対応策の一つが新設道路でした。東京新聞は、「新たに道路を作ってもらえればありがたい」と評価する声があった一方、「道路新設はコストが大きく、『予算が少なくて済む』という日立市に選定した理由が揺らぐ」といった指摘も上がった、と報じています。
また、工事車両が既存の道路を通ることなど道路の懸念の声も出されました。そして県は「対策は考えているものの、候補地を決めた『あり方検討委員会』では確かに道路の専門家はいなかった」と説明会で回答しました。
市民が理解できるものなのか、納得したのか、「そんなはずではなかった」と納得できないのか、このような「納得できる、できない」といった考えを含め、住民の考えを把握すべきです。
また、「今後の住民説明会の評価については、予定されている全ての説明会の状況を見極め、検討してまいる」と答弁があり、検討開始は、今、予定されている住民説明会後となります。予定されている住民説明会は、県ホームページによると8回開催とあり、当初予定した4回の倍に増えています。しかし、この回数で説明会として十分なのでしょうか。「会場が多賀市民会館で、足(車)が無くて、参加できない!」と訴えがありました。私は、住民説明会の内容だけでなく、場所、回数、参加規模が十分であったのかも含め検討すべきと考えます。6月から8月の住民説明会は市民会館や小学校だけでなく、地域交流センターなども会場となり40回、のべ748人が参加しました。今回の住民説明会が、この参加規模に見合っていないならば、より丁寧な説明を市が県に求めることを要望して次の質問に移ります。
(3)茨城県への回答時期と、判断の過程について
現在、県は本市、小川市長の回答待ちの状態で、県は本市に対して、「いつ頃回答が欲しいか」といった回答が欲しい時期については述べずに、「日立市長から受入れ承諾の回答をいただけるよう努める」と述べています。本市は、「受諾する、しない」という回答とともに、判断の過程や理由も示すことが求められます。
9月議会の一般質問で、「どのように判断するか」との私からの質問に対し、小川市長からは「市議会特別委員会の審議の状況を踏まえるとともに、地元を始めとする住民等の皆様の御理解、企業への影響等を勘案し、総合的に熟慮する」と答弁を頂きました。県に回答する際、それぞれがどういう審議を踏まえどう判断したかも市民に伝えることが求められます。
そこで、いつ頃回答するかの考えがあればその時期と過程、判断に影響する「市民・住民の考え」を把握するための取り組みを行うことは検討しているのか、など、今後の判断過程について伺います。
(答弁)
お答えいたします。
御質問の、県への回答時期と判断の過程につきましては、先程の答弁でも申し上げましたが、県の対応策の有効性について庁内で検討を行いますとともに、市議会特別委員会の審議の状況、住民の皆様の御理解、企業への影響等を勘案し、総合的に熟慮の上、県が考えているスケジュールに縛られることなく、判断してまいりたいと考えております。
その過程における住民の皆様の考えを把握する取組みとしましては、繰り返しになりますが、現在、県によるフォローアップ説明会が開催されている状況でありますことから、まずは、県が示す課題への対応策に関する住民の皆様の御意見に広く耳を傾けてまいりますとともに、市へ直接寄せられる御意見につきましても、しっかりと受け止めてまいりたいと考えております。
以上でございます。
(千葉)
「県が考えているスケジュールに縛られることなく判断してまいりたい」とご答弁がありました。県廃棄物対策課にヒアリングした際、県は「市民への説明の努力はする」が「市民が理解し納得した、してないといった判断は県ではなく市が行うこと」と述べていました。よって、「住民の御意見に広く耳を傾けて」いき、市民がどう考えているかをとらえて判断することが求められます。
「市へ直接寄せられるご意見につきましても、しっかりと受け止めてまいりたいと考えております」とのご答弁について、3月5日付の茨城新聞で、「最終処分場の建設反対署名」が1次2次合わせて12700筆集まり日立市小川市長に提出されたことが報道されました。「建設しないでほしい」という声や市民の動きをしっかりと受け止めることが求められます。
ご答弁にありました「課題への対応策に関する住民の皆様のご意見に広く耳を傾ける」ことについて、3月6日の住民説明会を私も傍聴しましたが、「新道路建設」の問題点がコスト以外にも市民から上がりました。太平田鉱山跡地に処分場を作るとしたら、「新設道路を作りそこから搬入する」としたことによって、「2車線以上の幅員を有する道路から直線距離が1キロ以内」の用地を処分場の候補地とする「外部搬入道路要件」を逸脱しているという指摘、「1キロ以内に既存の搬入道路がなければならない」という要件を外れるという指摘です。
県は、市民の不安にこたえるため南側から搬入するための「新道路建設計画」を示しました。しかし、「新道路建設計画」によって、「太平田鉱山跡地は要件から外れるため、選定に納得いかない」といった声を新たに生んでいます。解決どころか新たな疑問が生まれています。その原因は、選定プロセス、すなわち、県が候補地を1つに絞ってから公表した、3つまたは複数個所を選んだタイミングで公表したのではなく、1つに決めてから公表したためと考えます。仮に、3つの候補地に絞ったタイミングで公表していれば、3つの地域住民からそれぞれ意見や要望を聞く機会が生まれ、選定条件なども多くの住民と判断しなおすことができたと考えます。1つに絞って公表する、という県のプロセスによって、課題への対応策を示しても、また新たな問題が生まれています。
6日の住民説明会では、「今度、諏訪小学校に子どもが入学する」という市民の方から質問、意見が出されました。「子どもたちにとって、言いたいことがある。環境を崩すものを日立市に作ってほしくない。日立市は環境都市宣言を出している。この宣言からしても、県産廃処分場は宣言から外れていると考えている」と出されました。
2005年3月25日に発表した日立市環境都市宣言には「近年、私たちは、ごみ問題、生態系破壊、地球温暖化、オゾン層破壊など、新しく困難な問題を抱えることになってしまいました。これら環境問題の最大の被害者は、これから後の世代です。将来の市民に対し、環境と活力の調和した、持続可能な社会を創ることが、今に生きる私たちの使命です。」とあります。
今、この宣言をどう実践するかが問われています。市民から「廃棄物を燃やして埋める、という処理を続けていたら、地球が持たない!」と悲鳴のような強い訴えが届きました。県内の産廃処理は、減量化、すなわち、廃棄物を燃やして埋める処理の量が約半数あり、しかも年々燃やして埋める処理が増加し、再利用量は減少しています。減量化処理の後に残る廃棄物を埋めることが出来る最終処分場を作ってしまうと、廃棄物を「燃やして埋める」処理をする量が増えることにつながってしまいます。日立市環境都市宣言の項目「1 私たちは、地球環境にやさしい循環型社会を創るため、一人ひとりが、省資源、省エネルギー、リサイクルに心がけた生活をおくります。」とあります。この宣言を、今こそ実現するため、廃棄物の「減量化量」を減らし、廃棄物の再利用、リサイクル処理を増やすことが必要です。
よって、県産業廃棄物最終処分場建設について、市はきっぱりと受諾しないと県に回答することが、今の市民と、孫たちなど後世の市民、子を持つ親の願い、地球温暖化などの被害にあっている人々の願いにこたえるものであると訴え、私の質問を終わりにします。ご答弁ありがとうございました。
【資料リンク】
日立市|日立市 環境都市宣言 (hitachi.lg.jp)
新産業廃棄物最終処分場の整備に関するフォローアップ説明会の開催について/茨城県 (pref.ibaraki.jp)
(「課題への対策(PDF)」)
https://www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/haitai/syobun/documents/210304follow-up.pdf
動画リンク